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落語本 広瀬和生著 「僕らの落語 本音を語る! 噺家×噺家の対談集」

書名:僕らの落語 本音を語る! 噺家×噺家の対談集 著者:広瀬和生著 https://www.tankosha.co.jp/ec/products/detail.php?product_id=2072

書誌事項:淡交社 2016.10.31 272p ISBN 978-4-473-04128-9

解説

落語評論家広瀬和生氏が旬の落語家2人を選んで対談をしてもらう対談集。互いに境遇が似ている落語家を選んでいるためか、考えや、悩みに共通することろがあり話が深いところまで進んでいく。落語家が落語以外の話をするのは普通はマクラぐらいしかないが、272ページの4つの対談で占めていることから分かるように、それぞれの対談が長く、落語家が普段は第三者に話さないような事まで聞くことができてとても面白く貴重である。

内容

桂米團治×柳家花緑
人間国宝の子供と孫の対談

桃月庵白酒×春風亭一之輔
今一番輝いている若手落語家の対談

春風亭百栄×三遊亭兼好
一般の社会人としての時間を過ごした後に落語界に入門した落語家の対談

柳亭こみち×三遊亭粋歌
男社会の落語界で道を切り開こうとする女性落語家の対談

感想

全体を通していえるのは今の落語界の師匠方が優しいということ。落語家の師匠と弟子と言えば、人間扱いされないぐらいの上下関係があるイメージがあるが、この対談に登場してくる落語家の師匠方はとても優しい。外から見ると厳しいのかもしれないが、すくなくとも彼ら彼女らはとても優しくしてもらったと受け取っている。優しい師匠に出会ったが為に、ここに出てくるような面白い落語家が生まれたのではないかと思う。また、このなかには弟子を取っている師匠もいるが、彼らも弟子にはそんなに厳しくはできないようである。厳しい上下関係は伝統ある落語界でも昔話になりそうで、落語といえども現代人の世界になりつつあるのだと思わされる。

こみち師匠と粋歌さんは、自分たちの立場に危機感を強く感じていて、これから落語界で自らの道をどのように切り開いていくか必死に悩んでいるのに対して、すっかり肩の力が抜けていて落語家業を楽しんでいるように見えるのが、社会人経験のある百栄師匠と兼好師匠のお二人だ。若手と言われながらもある種の地位を獲得している白酒師匠と一之輔師匠も力が抜けている。

親から子へと継がれる歌舞伎界と異なり親子伝承の必然性のない落語界で、父・祖父に弟子入りした米團治師匠と花緑師匠。名人の家族としてのプレッシャーという身内だからこその悩みと、子供の頃から後に人間国宝となる名人を身近に見てきた落語家としてはとても貴重な体験が語られて面白い。